〒400-0124 山梨県甲斐市中下条939-2

糖尿病について

糖尿病とは?

ブドウ糖(炭水化物の構成要素)は,体の構成要素である細胞のエネルギー源です.このブドウ糖を使い,細胞内に留めておくには膵臓(すいぞう)のβ(ベータ)細胞から出てくるインスリンというホルモンが必要です.
糖尿病は,インスリンの不足や効きの悪さにより,細胞がブドウ糖を使うことができずに,結果的にが上がる病気です.体の中の化学反応(代謝)がうまく行かず,細胞の老化,特に「血管の老化現象(詰まったり破れたりすること)が20年以上早く進み,その分寿命が短くなり透析療法を受けないと苦しくていられなくなったり,失明や足先に壊疽(えそ)が起き,生活の質が落ちたりする病気です.

糖尿病の人が年を取ると?

近年,治療法が進歩して,脳や心臓の病気で亡くなる代わりに,糖尿病の患者さんでは,が寿命を決めるようになりました.その間,が進み,老化や運動不足により筋力が落ちてきます(サルコペニア).
その結果,そのまま放っておくと介護を必要とする生活になってしまいます(フレイル).

当院の目指すところ

私たちの医療の目標は,患者さんが「健康で長生き」できるよう支援することです.80歳を過ぎても,食事を楽しみ,介護を受けずに自分の力で生活する力を保持して行くことです.

「咀嚼(そしゃく)」と「運動」

2型糖尿病の治療の基本は,いかに傷んだ刺激するか,また筋肉量を増やし,効くようにするかです.つまりです.
インスリンは,糖だけでなく脂肪も溜め込むので,食事時間以外にガムを噛んでも逆効果です.

インスリンと食事量と運動量の関係

食事量と運動量の関係は,「動いた分だけ食べる」です.動いた分以上に食べれば,太ります.さらに,膵臓(すいぞう)を酷使し,過剰にインスリンを出させることになり,膵臓(すいぞう)は疲れてしまいます.
運動によってインスリンの効きが良くなります.食事だけ減らして減量できて血糖値が良くなっても,運動しなければ,筋肉が減ってしまい将来自分の体を動かすことすらままならなくなるので,運動は必須です.

傷んだ膵臓(すいぞう)を休ませるには?

傷んだ膵臓(すいぞう)を休ませるにはインスリン注射が一番効果的です.インスリンは打ち始めると一生止められないのではなく,膵臓(すいぞう)が疲れて来たら回復するまで,短期間打てば止められます.
飲み薬は,あくまでもインスリンの効果を助けてくれるだけなので,です.つまり,あごを動かすこと(咀嚼,そしゃく)と運動をすることが大切です.そうすることで,インスリンの効きが良くなり,また膵臓(すいぞう)からのインスリンの出が良くなります.

生活習慣病患者さんはなぜ食べ過ぎてしまうのか?

糖尿病に限らず,生活習慣病になっている人たちは,動いて消費したエネルギー以上に食べています.必要な分だけ食べて満足できない(食べ方がへたな)人たちです.あるいは,動いて消費したエネルギー以上の食事を食べたあと,ようやくお腹が一杯に感じる人たちです.したがって,なぜ食べ過ぎてしまうのか,あるいは,食べざるを得ない状況に陥ってしまうのかを考える必要があります.そのヒントは,健康な人たちと異なっている,食生活上の自分の「くせ」と「ずれ」の中に有ります.

当院の療養指導の特色

食生活上の自分の「くせ」と「ずれ」がどこにあるか考えます.そしてなぜ自分が糖尿病になってしまったか,頑張っているのに良くならないのは何故か,太るほど食べているのになぜ満足できないのか等の,食生活上の自分の「くせ」と「ずれ」に対し,対話を通してスタッフと一緒に振り返り,対策を考えて行きます.

糖尿病では,どんな検査が必要か?

糖尿病は,基本的に無症状のまま進行して行きます.症状が出るのに早くて5〜6年,通常10年以上かかります.従って,まず自分がどんな病気に罹って(かかって)いるのか理解し,受け入れることから始めます.
その時々の自分の糖尿病の重症度は,尿糖(血糖値が大体170mg/dlを越すと尿中に漏れ出てしまい陽性になる),血糖値(血液中のブドウ糖の濃さ)やHbA1c(2〜3ヶ月の血糖値の平均値を示す指標)でわかります.しかし,糖尿病患者さんの生活の質を決めるのは動脈硬化の進行度(脳や心臓にどれだけ血液が通っているか),なので,それぞれの臓器の状態を調べます.また食生活と別の糖尿病の原因として悪性腫瘍の合併やホルモン異常が潜んでいることがあるので,人間ドックで行う程度の検査をする必要があります.太った人は,CTで内臓脂肪を測ります.糖尿病は,歯周病や認知症も進行しやすいので,これらは,眼科,歯科,神経内科等総合病院と提携して行っていきます.

生きるために必要な栄養

生きて行くためには,「食べる」ことが必要です.健康的に生きて行くためにが,食事療法の基本です.
つまり食材の「バランス」と「量」が大切です.

糖尿食は健康食

糖尿病の食事は,日本人すべての人にとって健康食と言え,食事制限ではありません.今まで,食べる食材に偏りがあり,健康な人より多い量を食べていたため,糖尿病を発症してしまいました.栄養指導を受けて,1食分の食事の食材の「バランス」と,自分にとっての「適量」がわかるようになりましょう.「自分が動いた分だけ食べる」が適量です.

お腹がいっぱいとは?

ほとんどの患者さんは,自分はそんなに食べていないと思っています.あるいは,こんな量じゃ物足りないと思っています.その感覚が,「ずれ」だと思って下さい.疲れ具合や勤務時間,体格で量を決めると食べ過ぎのもとになります.疲れないようにするには,日頃の運動で体を鍛える必要が有ります.その「ずれ」を治して行きましょう.「満腹」になることとは,食事を良く味わい「満足」して食べることであって,お腹を満杯にすることでは有りません.我慢せずとも,1食分で満腹になるために「咀嚼法」,「箸置き法」と「マインドフルネス」がありますす

「行動療法」とは?

患者さんが,自分の状態を知り,具体的な指標をもとに自ら主体的に行動できるようにする治療法です.例えば,「次回までに1kg痩せて来なさい」というのではなく,「100g痩せるのに何歩余計に歩けばよいか?まずは2000歩から試してみて」と問いかけします.その際100gをグラフ化して実感できるようにします.これは,「グラフ化体重日記」です.そのほか,良く噛むための具体的手法が「咀嚼法」「箸置き法」です.
また自分がどれだけ,いつ食べているか実感するために,「食事記録」をつけたり,「食生活タイムスケジュール」を書いたり,「食生活年表」を作ったりします.これらは,のなかに含まれています.
自分のくせとずれに気づくために「食行動質問票」があります.血糖値に関しては,血糖自己測定(SMBG)を積極的に導入し,自分の食生活と血糖値のと関連を考えてもらいます.

「咀嚼(そしゃく)法」と「箸置き法」

美味しさを感じるよう食べ方の基本は,食べる順番や制限ではなく,一口の量を少なくすることです.味わうためには,食べ物に意識を集中し,一口の量を少量だけにして,良く噛んで口の中で「さらさら」になるまで消化する必要が有ります.一口が大き過ぎると,噛んでいるつもりでも大方飲み込んでしまい,噛めないどころか味わえません.一食分で満腹感が得られるように「咀嚼(そしゃく)法」(だけ口に入れて,30回噛めば無くなる量を噛んで味わって食べること)の練習をしましょう.食べ物を大切に食べることを学びます.
食べ物に集中し,せっかちな食べ方を治すために「箸置き法」があります.一口ごとに「ご飯」と「おかず」のいずれかを口の中に入れ,箸を置き,それぞれの味を味わいましょう.慣れるまでは,咀嚼法シートを使い,一口食べるごとに正の字の一画ずつを用紙に記入して行きます.お米や,パン,あるいはおかずの食材そのものの味がわかるようになります.

「グラフ化体重日記」

80歳過ぎても,風呂とトイレが自分ででき,肺炎に打ち勝ち,一人で好きな所に歩いて行けるには,筋力と体力が必要です.そのためには,できるだけ早い年齢から運動することが大切です.自分の食べている量と,運動量が適切なのかを知るためには,体重を測ることと万歩計をつけることが一番です.「運動してもなかなか体重が減らない」という前に,自分がどれだけ運動すれば体重が減るのかを知ることが重要です.そのために,1日4回(起床直後,朝食直後,夕食直後,寝る前)体重を測り,自分のバイオリズムを目で見てわかるようにします.万歩計を用意して「1日にどれくらい歩くと,どれくらい体重が減るか,グラフにつけて自分でわかるようになりましょう.歩けない人は,手に万歩計を持って体操をしてみましょう.

マインドフルネスとは?

いつも感じている体の感覚にあえて注意を向けて 「今感じている感覚を受容する」というのがマインドフルネス.心を今に向けた状態.例えば,集中して食べようとしている自分に気付く! 昨日食べたものを思い出せないということは,ただ食物を胃に入れて腹を満たしているだけで,食べたことになりません.「食べる」ということは,「幸せを感じる」ということです.今何を食べようとしているか,一口ひと口料理の内容を確認.よく見る.香り,噛む食感,舌の上で食べ物が動く感覚に意識を集中して,味をしっかり味わう.これが,咀嚼の意味合いです.この一口に集中.一口ごとに箸を置いて,しっかり味わって食べる.“十分満足した” 自分を知ってください.
それが美味しかったのか?
料理の中に何が入っていたのか?
作り方はどうだったのか?